スノー&ドロップス

 スマホを耳に当てたまま、降りてくる人を目で追った。烏羽色(からすばいろ)の髪に、グレーの学ラン。スラっとした長身で、品のいい佇まい。

「茉礼は、いつからこんな嘘を平然と吐くようになったんだろう。心底傷つくよ」

 どうして、ここにいるとわかったの?
 あのメッセージも、電話もぜんぶ、知ってて……話していたの?
 目に映っている光景が信じられなくて、私は一歩後退する。鶯くんの皮を被った、なにかから逃げるように。

 電車のドアが閉まりかけると同時に、藤春くんが私の手を引いて乗り込もうとした。でも、反対の腕は鶯くんに阻まれて、引き裂かれてしまう。

「触るな」

 腕の中におさまった私を見て、顔を歪ませながら藤春くんがホームへと降りる。

「僕の茉礼に触るな。もうどこへも行かせない」

 肩へ巻き付く手に、ぐっと圧迫されていく。静かに怒りを抑えているのが伝わってくる。
 痛い……痛いよ、鶯くん。謝るから、もう逆らったりしないから、許して。

「……GPS? それとも盗聴? それ犯罪だけど」

 腕組みしながら、藤春くんが首を傾けた。動揺するでもなく、いたって冷静。私の心臓は、こんなにもうるさいというのに。