スノー&ドロップス

「どうしたら……助けられますか」

「青砥さんが、俺に恋してくれたらかな」

「……それ以外の方法は」

「うーん、ないね」

 はなから期待していない口調。焦るでもなく、諦めているように感じた。

 駅へ辿り着くまで、何も言えなかった。以前の私が乗り移ったのか、重い唇は引っ付いたまま。
 古びたホームへ上がり、小さな待合室へ入る。奇跡的にあった自動販売機の前に立ち、飲み物を選ぶ。電子マネーは対応していないらしい。

「青砥さん、なに飲む?」

「喉渇いてないので……いらないです」

 財布を忘れたことに気づき、嘘をつく。あれほど歩いてきたから、ほんとは喉が砂漠状態だけど。

「あー、現金ちょっとしか入ってなかった」

 財布から百円玉を取り出し、藤春くんの指がボタンを押す。カランと出てきたのは、桃味のミネラルウォーター。
 ごくりと動く喉仏が、男子であることを知らしめる。普段はほとんど目立たないから、余計に。
 ぼんやり考えていると、目の前にペットボトルが差し出された。

「はい。ほんとは喉死にそうでしょ」

 彼は心の中を読めるのか。当てられたことに加えて、飲み口に目がいき赤面する。

「……でも」

 これをもらうと、間接キスになってしまう。だからと言って、違うものをねだるのは厚かましい。

「暑いし、脱水症状になるよ」

 流れで受け取ってしまった。
 今の気温は、三十二度。備え付けられている駅の温度計が訴えてくる。

 じめつく熱気で蒸される首筋と、ほんのり汗ばむ手。意を決して飲み込んだ水は、氷のように冷たくてぞくりとした。