スノー&ドロップス

「……えっ」

 一瞬にして、あたりは闇へと包まれる。私の頭がなにも考えられないというように、思考を停止したのだ。
 動けなかった。この瞳は嘘を吐いていないと感じたから。

「冗談だって。もうすぐ駅みたいだし、なんか飲み物買おう。あったらだけど」

 いつもみたく笑ってごまかしているけど、今のセリフは心の底から湧き出た本音だ。あの瞬間の藤春くんは、まぎれもなく真剣な目をしていた。

 ミーンという虫の声と、二人の足音だけが響いている。開いては閉じを繰り返して、ようやく口が離れた。

「なにか……あったんですか?」

 湿った手のひらでスカートを握りしめて、藤春くんのとなりへ並ぶ。
 今日は、ずっと様子がおかしい。独特な空気を持っている人だけど、あんなことを口にしたのは初めて。

「これ、朝起きたらなってたんだ。徐々にくるものだと思ってたから、ちょっと引いた。うわー、とうとう来たかって」

 髪を触りながら、藤春くんは乾いた笑い声を落とす。無理に作っているのだろう。語尾にため息が混じっている。
 線路傍に転がる干からびた蝉から視線を戻して、私は黙って聞いていた。

「カウントダウンが始まったって感じかな。残りの寿命は、あと七ヶ月くらい」


 ーー俺は十七の誕生日が来るまでしか生きられない。

 家系や呪いの詳しいことは、よくわからない。
 でも、ただ死を待つだけの彼を、見て見ぬふりをしたくない。