スノー&ドロップス

 みんな僕の前からいなくなる。
 なんでもないような顔をして。優しい声で嘘を付き、残酷(ざんこく)に裏切る。

 あの(ひと)も、凛名の母親も、凛名も……みんな。

 凛名がいない日々は、静止した時間が過ぎていく、ただ呼吸をして生きているだけの毎日だった。
 小学二年になる前の春休み。父は英恵(はなえ)さんと籍を入れ、僕と茉礼は兄妹(きょうだい)になった。

 今更、家族なんてどうでもいい。
 血の繋がりがあってもダメだったことが、赤の他人と成し遂げられる訳がない。

 誰も信じない。大切な人を作るだけ無意味だ。
 こんな絶望は二度と味わいたくない。
 そう思っていた。


「鶯……くん? どうしたの?」

 耳元で広がる儚げな声と、柔らかな人肌の感触に気付く。無意識のうちに茉礼を抱きしめていた腕に力が入る。

 恥ずかしそうにしたり、泣きそうになったり、笑ったり。

 ーー面倒くさそうな子。それが、茉礼の第一印象だった。

 太陽のような笑顔。鈴蘭(すずらん)のように可憐(かれん)な茉礼の声は、一緒に過ごしていくうちに、僕の凍りついた心を溶かしていった。

 兄弟が欲しかった茉礼なら、兄という存在を特別に見てくれるはずだ。素直に喜びや悲しみを伝えてくれる彼女なら、必要としてくれる茉礼なら大丈夫。

 僕を生きる全てにしてしまえば、きっと、裏切れない。

 でも、茉礼は僕から離れていく。
 長年築き上げてきた関係は、約束と同じように(もろ)い糸となり、いつか(ほど)けてしまうだろう。