スノー&ドロップス

「ほんっと最低。冷酷無情(れいこくむじょう)。そのうち妹にも愛想尽かされるんじゃない」

 表情は見えなくても、唇を尖らせて話していることが伝わってくる口調。

 太腿(ふともも)(あら)わになったスカートを揺らしながら、日比谷はかがんで靴を履く。見られたくなくて抑えるくらいなら、なぜ短いスカートを身にまとうのか、女子の生態が理解できない。

「また来ていいよね?」

「気が向いたら」

「そうゆう奴よね、鶯祐は。じゃあ、また明日ね」

 世界を閉ざす音が鳴る。玄関の鍵を掛けると、嵐が去ったように疲れが体にのしかかった。まるで悪霊が肩に住み着いたかと思いたくなるほど重い。

 すぐ先にある階段裏の壁に視線を送り、見えない気配に笑みを()らす。

「……そんなとこに隠れてないで、出ておいでよ」

 五秒ほど沈黙が流れ、隠れていた茉礼がひょこっと顔を出した。
 なぜ分かったのかと言いたげに眉を下げながら。盗み見が見つかった恥じらいからなのか、頬紅を付けたような顔をして近付いてくる。

「鶯くんが高校の人連れてくるなんて、珍しいね」

「みんなで課題やることになって。ほんとは、もう一人来るはずだったんだ」

「綺麗な人だったね……。あの、お母さん遅いね」

 何かを探るような声は、次に続ける言葉を素直に吐き出せないらしい。
 きっと、気にしてるんだ。この前、神社の前で僕が日比谷といた時のこと。

 絹糸のような雨が綿々(めんめん)と降っていたあの日に、わざと見せたワンシーンを。