スノー&ドロップス

 いつもならメニューをほとんど見ないで、ココアを頼むのだけど、今日はハーブティーというものを注文した。人生で初の経験だ。

「言ったでしょ? 世界は壮大なんだって。こんなもんじゃないよ。もっと楽しいことたくさんあるんだよ」

 目の前に座る藤春くんに、笑いかけたとき。一瞬にして、視覚が奪われた。真っ暗闇の世界で、生暖かい感触に阻まれている。

 人の手で、目を……隠されている?


「だーれだ」

 まさか、まさか……だとしたら、今までの行動をすべて見られて……?


「ご、ごめんなさ……ぃ」

 思わず口からこぼれた言葉に、藤春くんの声が重なって聞こえた。

「なにしてんの、あんた」

「……え?」

 ゆっくり視界が広がって、ふと顔がのぞき込んでくる。

 だ、誰ーー?
 くりっとした瞳に、ぽてっとしたお団子の頭。小動物のような可愛らしい顔が、二ヘラと白い歯を見せて。

「よっ、雪のお友だち! 久方(ひさかた)ぶりやな」

 耳元に広がる艶やかな声に、再度驚きを持っていかれた。椅子から転げ落ちなかっただけマシだ。

「お姉さまを()こうなんざ、百年、いや千年早いんじゃ。雪ちゃんよ」

 当たり前のように、その女の人は藤春くんの隣へ腰を下ろす。
 そうだ。この独特なオーラは、この前ブラウスを貸してくれた藤春くんのお姉さんだ。