スノー&ドロップス

 見えないよと言われ、一呼吸おいて、どうにでもなれとカーテンを開ける。

 じっとこちらを見ていたけど、藤春くんはなにも言ってくれない。どう反応したらいいのか、困っているんだ。
 豚に真珠、馬の耳に念仏。地味な私には、身分不相応で変なのだと悟った。


「かわいい」

「……え?」

 うつむきかけの顔を、少しだけ上げる。
 そっぽを向いた藤春くんの耳が、ほんのりと赤くなっていた。
 ありえない。私に限って、とんでもなく都合のいいセリフが聞こえた気がする。

「もっと自信持ちなよ。青砥さんって、色白だし髪もキレイだし。気づいてないだけで、いろんな服似合うよ」

 照れくさそうに目線を逸らしながら言うから、こっちまで赤くなって、勢いよくカーテンを閉じた。
 褒められることなんてほとんどないから、どうしたらよかったのか分からない。

 鏡の前でもじもじしていたら、いきなりカーテンが開いて手を引かれた。驚いている暇もなく、早歩きの藤春くんが耳打ちする。

「合図したら、走れる?」