スノー&ドロップス

 なにげなく振り向いたとき、電柱が気になった。今、人影が隠れた気がして。

「そこの角の店がおすすめなんだ」

「そう……なんですね」

 誰かに見られていたような……でも、確証はない。気のせいかもしれない。後ろ髪を引かれる思いはあったけど、私は確認することなく先へ急いだ。

 この建物は、映画館にしか足を踏み入れたことがない。そのためか、煌びやかな洋服や小物が並ぶショーウィンドウが新鮮に思える。
 その隣に、地味な格好をした自分の姿が映り込む。私は思わず顔を背けた。

 見慣れていたはずの部格好と不相応な場所。通り過ぎて行く女の子たちは、みんな綺麗でまぶしい。今さらになって、羞恥(しゅうち)が襲う。

 鶯くんといる時は、こんな感情なかったのに。

 オレンジブラウンのワンピースを手に、鏡の前に立つ。私のフォルムに当てがい、目を上下に動かして。

 薄くて柔らかな肌触りと、膝下丈でもふわりとした清涼感がある。ギャザーによってボリュームがあるが、Vネックのデザインが可愛らしさも演出している。

「いい色味なんだけど、似合うのはこっちかなぁ」

 首を傾げつつ、藤春くんはもう片方の手にあったミントグリーンのワンピースを私の胸の前へ持ってきた。まるで着せ替え人形の服を選ぶように、あらゆる服を次から次へと持ち出してくる。

「あ、あの……さっきから、何をしているんですか?」