時刻は午前零時を指そうとしていた。

黒い木々に囲まれ、不気味な雰囲気を持った広い建物の重い門がゆっくりと開き、黒髪に赤い目の鬼の少女ーーーツヤ・シノノメが麻袋を抱き抱えて歩いてくる。

「いい肉を手に入れたぞ。十五歳のメス。いいところの育ちらしく、いいもんを食ってきたらしい。こいつが産んだ子どももいい肉になるだろ」

そう冷たく言いながら、ツヤは乱暴に袋を床に置く。ツヤの目の前には七体の恐ろしい姿をした悪魔と、彼らの元で働くゴブリンなどが揃っていた。

「おい、商品に傷をつけたら肉質が悪くなるかもしれないだろ!」

悪魔の一人が怒鳴りつけ、ツヤは「すみませんでした〜」と形だけの謝罪をする。悪魔もそれをわかっているため、さらに顔を赤くするが、仲間の一人に止められた。

「ベルゼブブ、肉質が悪くなるのは死んだ時だ。捕らえたメスは生きてるんだろ?だったら少々の傷は問題ないのさ」

悪魔はゆっくりと近付き、時折り動く麻袋の口を開ける。そして、袋の中にいる少女を全員で覗き込むように見つめた。