聖夜のおとぎ話





「あ」





声の主はもみの木の裏にいた。縮こまって、木の枝で地面に何か書いている。





暗闇ではっきりは見えなかったけれど、そこにいたのはよく本で見るような、冬によく絵で描くような、





「サンタさんだ…」




「…違うよ、迷子だよ」




「サンタさんの服と帽子じゃん」




「…いっぱんじんにバレた。兄ちゃんに怒られる……」





この世の終わり。ませた友達が最近言っていたのを思い出した。





ああ、なるほど、このサンタさんもそう思ってるのかな。





表情は暗がりで隠されていたけれど、青いサンタさんの声は震えていた。





「誰にも言わないよ、私。
サンタさん、手出して。指切りげんまん!」




「…サンタじゃないよ、小麦だよ」






私はしゃがみこんで、小さな声で小麦と指切りをした。