「…小麦が、立派なサンタさんになれますように!
きっと大丈夫だよ、今まで頑張ってきたことちゃんと分かってるよ」
「は、ちょっと待て…」
「バイバイ、小麦」
小麦の引き止める声に振り返ることも無く、私は夜の道を走った。
人前に出られないから追いかけてこないことはわかっていた。
「っはあ、はあ……もう、いやだ、」
一度も足を止めずにそのまま家に着いて、ベッドに倒れ込む。
…これで、最後?
結局なにも伝えられなかった。
言いたいこと、沢山あったはずなのに。
手に取ったのは小麦がくれた、真っ赤なサンタさんの隣に女の子が並んだ、雪の降るスノードーム。
いつかこうなれるって信じてた。