何を言わない私を見て、小麦はまた口を開いた。
「一人前になると、プレゼントを届ける範囲が広まるんだ。仕事が遅くなるのが今までよりも遅くなる、と思う。
冬侑のこと待たせるのも嫌だし、だから…」
「うん、わかった」
もうその先は聞けなかった。
大好きな小麦の低くて優しい声も、初めて嫌だと思った。
やっぱり小麦を想うことはいけないことだったんだよ。
わかってた。わかってたはずなのに。
伝えることも出来ない。
微笑んで全部を隠す自分も、物わかりの良いフリをするのも、嫌い。
「そんな顔しないで小麦。ね?」
そう言った途端、涙が滲んで小麦から目を逸らした。
イルミネーションがぼやけていく。
……あ、
(――赤も青も、見たことある色なのに、今日はどうしてこんなに綺麗だって思うんだろう。)
そう小さい頃に思った私は、色の本をたくさん読み漁った。
赤にも青にも、色んな種類があるって知って。



