そう心を決めたその年の冬、去年よりも少し早い時間、小麦はいつも通りベンチに座っていた。






去年と違うのは、私よりも先に来て待っていてくれたことと……青い服が、サンタさんらしい真っ赤な服に変わっていたこと。






「合格余裕」




「ふふ、おめでと。
…それで。やっとサンタさんになれた小麦君はどうしてそんなに元気無いの?疲れた?」





小麦の表情は、私に向けたブイサインとは余りにも不釣り合いだった。






わかっていた。疲れているわけじゃない、眠たいわけでもない。
……何か、悪いことを言われるんだって。






「…ごめん冬侑。
もうこの日、この時間にここに来られるの、もう今日で…最後かもしれない」






隣に座った私の手を握って、静かにそう言った。






冗談では無いことは、小麦の綺麗なブラウンの瞳を見たらすぐにわかる。