「―――楓(ふう)ちゃん、もし彦星に恋したらどうする?
一年に一回しか会えないし、彦星さんには私たちとは違った彦星さんの世界があって。…織姫さんにゆずる?」





「なーんだその質問?
私は譲らないよ?独占欲強いから」





ふふん、と強気に笑う目の前の女の子は、机に突っ伏す私の髪をくしゃくしゃになる程撫でる。





サンタさんに恋してる、なんて説明のしようがなくて一番仲の良い楓ちゃんにも言わないまま高校二年生になった春。





加えて、日本語が苦手な私は、楓ちゃんに「主語が!無い!」って言われるのが日常茶飯事。






帰国子女だとか、そういう事ではなくて、ただ単に文章を頭の中で組み立てて声に出すことが人並み以下の能力しか無いってだけ。






こんなイレギュラーなおとぎ話を、楓ちゃんに説明できる気がしない。





そのまま、今に至る。