初めてのバイトから2週間、少しずつ仕事にも慣れてきて、先輩たちとも話せるようになった。それが案外楽しくて、バイトするのも悪くないなって思ってた。

レジスペースの中に入り、なくなったレシートのロールを交換しているとメロンパンがひとつカウンターに置かれた。

「いらっしゃいませー」

「お前、バイト何時まで?」

奏志だ。

「7時半までだよ」

メロンパンを手に取り、ピッとバーコードを通す。

「あと30分か…、じゃあそこで待ってるから」

「は?あ、110円になります!」

私が金額を言い終わらないうちにレジにお金が投入された。そのまま、じゃっとコンビニの外へ出て行った。

「ちょっと!待ってよ!まだ30分あるよ!?」

もちろんバイトが早く終わるなんてことはなく、なんなら片付けとか着替えで7時半過ぎちゃった。

でも外に出るとちゃんと待っていた。

「…寒くない?」

「めちゃくちゃさみぃーわ!帰るぞ!!」

歩き出す奏志の後ろをついていくように小走りで追いかけた。
ヒューっと冷たい風が吹く、手袋してマフラー巻いてコートだって着てるのにこんなに寒い。

奏志はよくこんな中、30分も待ってたな。

「めっちゃ寒い~っ」

「寒いって言うな!余計寒くなるだろ!しかもこっちは部活の帰りだからな!」

学校帰り、そのまま寄ってくれたらしい。その後待っててくれたんだけど、てか別に誰も迎えに来てなんて言ってない。

「最近部活真面目に行ってるね」

「元から真面目だぞ!俺は!あいつが不真面目なんだ!」

「あっちはテニス部幽霊部員だもんね」

「しかも風邪引きやがって!」

「そーなの!だから今日バイト休み!忙しいのに!」