子どもの頃、自分を象る全てが嫌いだった。

 陽に透けると金色に見える茶色の髪も、(あお)みがかったグレーの瞳も。日に焼けても小麦色にはならず、真っ赤になるだけの白い肌も。

 子どもの頃の私は、目や髪の色、両親がいないという家庭環境のことで揶揄われて虐められることが多かった。

「お前、親に捨てられて、ばぁちゃんと暮らしてんだろ?」
「お前の目、変な色だもんな」
「髪の毛だって、ほんとは目立ちたくて染めてんだろ」

 小学校からの帰り道。いつものように後ろから私を追い回して髪を引っ張ったりランドセルを蹴ったりしてくる男の子たちから逃げていると、目の前に綺麗な顔をした男が現れた。

「お前ら、勝手にこいつのこといじめてんじゃねーよ」

 背が高くて、髪も服も真っ黒で。ズボンのポケットに手を突っ込んで、斜に構えるように立っている。

 顔は、お伽噺に出てきそうな王子様みたいにかっこいいのに、全身真っ黒過ぎて悪魔みたいだ。

 私をいじめていた男の子たちが、男の登場に少し怯む。