そう、これは全部熱を出して弱っているせいだ。
らしくない行動も思考も、芦原くんの温度に安心してしまうのも、全部、熱のせいにしてしまおう。
そうじゃないと──…芦原くんを引き留めた理由が、他に必要になってしまうから。
「……なんでそんなかわいいことするかなぁ…」
保健室は、心臓の音が聞こえているんじゃないかと思うほど静寂に包まれていた。裾を握りしめていたわたしの手を包み込み、離す。
芦原くんは椅子ではなくベッドに座りなおすとくしゃくしゃと襟足を掻き、それから はあ…と大きなため息をついた。
「あのさ、ひろ」
「……、」
「一応、俺も間違ってヘンなことしちゃわないように距離とってんだけど。分かってる?」
顔の横に手が置かれ、芦原くんの影が近づいて来たと思ったら──こつん、額と額を合わせられた。
芦原くんの三白眼の中で、わたしが揺れている。



