それにしても、七海はよく熱があることに気づいてくれたなぁ。
わたしですら、ちょっとら今日は気分がよくないかも、くらいの感覚でいたのに。
思い返せば、中学の時から前髪を切った次の日には絶対気づいてくれていた……ような。
ちょっと切りすぎちゃってオン眉になっちゃったときに「なんかクソガキっぽい」と言われて、わたしの代わりに千花ちゃんが怒ってくれたりしたこともあったな。
なつかしいなぁ……。
熱でぼんやりする頭で昔のことを思いだしているうちに、だんだんと睡魔が襲ってきた。
まぶたが重くなり、布団の温もりが心地よくなってくる。
最近は考えごとが多くてあまり眠れない日が続いていた。
そのこともあって体調を崩しやすくなっていたのかもしれない。
『ひろのこと見てると汚したくなる』
『ワガママだってわかってるけど、ゆるしてよ』
『なかったことになんかすんなよ』
ここ最近、一人になった時にいちばんに考えてしまうのは決まって芦原くんのことだった。
千花ちゃんや七海の手の温度よりずっとずっと熱かった芦原くんの体温を思いだしては胸がぎゅうっと締め付けられる。
なかったことになんか、できるわけがない。
「……、あいたい」
芦原くんに会いたい。
顔を見て話したい。触れてほしい。
そう思うのは、熱で脳がうかされているせいなのかな。



