「あ、七海。お願いあるんだけど」
とある日の昼休み。
わたしの席の横を通りがかった七海を、千花ちゃんが呼び止める。「ん?」と短く返事をされ、千花ちゃんが続きを紡いだ。
「ご飯食べたら課題の答え見せてほしいんだけどいい?一応解いたんだけど合ってるか不安で。今日当たる日なの~」
「いーけど。昨日ってそんな難しい問題あったっけ」
「うわぁ、七海ってなんかいつも一言余計だよね」
「はあ?どこが」
「気づいてないあたりもダメ。そんなんだから好きな人ひとり落とせないんだよ」
「ばっ…、それ今関係ねえだろ!」
5時間目に控えている数Ⅱの授業。
全開出された課題の答え合わせから入るのが基本で、当たる人は事前に先生が勝手に割り当てる仕組み。
七海に答え合わせしてもらうと確実に正解だから、クラスメイトの前で間違えなくて済むんだよね。