吉良くんの言葉に、頭が全然追いつかない。
「玲於のこと好きになった女、口をそろえて言うんだよ、『芦原くんって基本距離近いのに思わせぶりだよね』って。……まあ、思わせぶりっつーか、優しいだけなんだけど」
「……、」
「玲於、ああ見えてちゃんと線引きしてるし」
わたしが知っている芦原くんの情報じゃない。
そのはずなのに、ストン、とわたしの中にそれらの情報が溶けていく気がするのは。
「玲於がおまえにこだわってる理由って、なんなんだろーね?」
───単なる自惚れ、だろうか。
「玲於、いいやつだよ。俺からもおすすめしとく」
「え、」
「じゃ、それだけだから。気を付けて帰んなよ」
そう言うと、吉良くんはまたひとつふあ…と欠伸を落として歩いて行ってしまった。
取り残されたわたしの脳内で、吉良くんから言われた言葉がリピートしている。



