吉良くんとは、テスト期間から通してもそこまでまともに会話をした試しはなかった。
芦原くんとふたりきりになることはあっても、吉良くんとふたりで話す機会はあまりなくて、そうこうしているうちにテスト期間が終わってしまったのだ。
とはいえ、いざふたりきりになると何をはなしていいかわからず気まずい。
わたしと芦原くんの間に起きていた事情を知っているか否かはわからないけれど、なんとなくすべてを見透かされているような気ももするわけで───……
「なぁ。玲於ってさ、実はキスすんの嫌いなんだよ」
吉良くんが、変わらないトーンで言った。
ぱちぱちと瞬きをする。
「玲於ってモテるし、前まではそれなりに彼女がいたりもしたんだけどね。キスしたいとか、触りたいとか、そういうの思えないんだってよ。ホントに男かよ?って思うよな、フツーに」
「え……」
「歴代の彼女と別れた原因は全部それ。いろいろ噂もあるけど、玲於が否定しないから浸透しただけだし」



