「そろそろ帰るかぁ」



しばらくイルミネーションを眺めたあと、芦原くんが言った。「明日テストだしな」と付け加えられて、わたしは曖昧に頷く。





……本当はまだ帰りたくない。


テスト勉強も毎日一緒にして、イルミネーションに一緒に行く約束もして。


十分すぎるくらい同じ時間を過ごしたのにバイバイするのが恋しいなんてワガママすぎる……けど。




「…ひろ?」





なかなか動こうとしないわたしを不審に思った芦原くんが顔を覗き込んでくる。

手が離れそうになった瞬間、反射的にキュッと力をこめてしまった。



芦原くんと一緒にいると感覚が狂うの。


まだ手を離したくない。一緒にいたい。
そんなわがまま、おかしいのに。



「……もう少し、だけ」



ちらり。俯いていた顔をあげて芦原くんを見上げると、芦原くんは驚いたように肩を揺らした。


それから。





「……それは反則じゃね?」

「え​───……っ、」




わたしには聞こえないくらいの小さな声で何かを呟いたあと​────わたしたちの距離がゼロになった。