不意に、芦原くんはおもむろにブレザーを脱ぐと、その下に着ていた黒のパーカーをわたしの頭からかぶせた。
芦原くんのやさしい香りが鼻腔をくすぐる。
「それ裏起毛だからめっちゃあったけーよ」
「えっ、い、いいよ!芦原くん寒くなっちゃう」
「ヘーキだって。それより、ひろにはちょっとサイズデカすぎるけどこれはこれでかわいーね」
芦原くんは女の子との距離が普段から近いから何も考えずに言っているのかもしれないけれど、わたしはかわいいなんて言われ慣れていないわけで。
落とされた言葉に「あ、う、えっと、」と言葉を詰まらせると、芦原くんは八重歯をのぞかせて笑った。
心臓がきゅうっとなる。
痛いとか苦しいとかじゃなくて、まだ名前がついていない感情が押し寄せてくる感じ。
もどかしくて、照れくさい。



