「おい二瀬」
名前を呼ばれて視線を移す。
眉間をしわを寄せたまま、七海がしぶしぶ口を開いた。
「俺はおまえにしか教えねーから」
「えっ」
「……二瀬が自分で芦原に教えるならべつに一緒にやってもいい」
七海って、やっぱりなんだかんだ優しい。
七海はこれまで通りわたしに勉強を教えてくれて、それを今度はわたしが芦原くんに教える。
そのためにはわたしがちゃんと内容を理解していないといけないってことだから……すごい、相乗効果ってやつだ!
「ありがとう七海!」
「べつに。まあ二瀬の頭で人に教えられるとは思えな……」
「よしっ、わたしがんばる!」
いつもは七海に教えてもらっても赤点回避できるかギリギリのラインにいるわたしだけど、芦原くんの力になりたいから今回はいつも以上に頑張らなきゃ!
胸の前でグッと拳をにぎりしめて意気込む。
七海はくしゃくしゃと髪を掻き、「ほんとムカつくわおまえ」と呟いていた。
わたしのこと嫌いなくせになんだかんだ面倒見がいいんだよね。やさしいなぁ、本当に。
七海が良い奴だってこと、ちゃんと知ってるからね。



