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「あ、ねえ見て見てひろ」
七海のスパルタ教室が始まって2時間ほど経った頃。
「少し休憩な」と七海(鬼)から許可をもらい、おやつがてら頼んだチョコレートケーキを頬張っていると、千花ちゃんがちょんちょんとわたしの肩を叩いた。
「んー?」
「ほら、あそこ。高嶺ツインズ歩いてる」
千花ちゃんが指さした先。
つられるように目を向けると───綺麗な金髪が視界に収まった。
交差点で信号を待っているみたいだ。窓際の席だからこそ余計によく見える。
「芦原くん、いつ見ても目立つなぁ」
「はひかに(たしかに)」
「あは。ひろ、もぐもぐしてるのかわいい~」
千花ちゃんは息するように可愛いっていうから、わたしもすっかり慣れてしまった。
もぐもぐ、ごくん。口に含んでいたんケーキを胃の中に流し込んでから、もう一度窓の外に目を向ける。



