ワイシャツの袖は3回ほど捲っていて、そこから血管が浮き出ていた。首元にネクタイはついていなくて、第2ボタンまで開いちゃってる。
ていうか、芦原くんの鎖骨のライン、めちゃくちゃきれいだなぁ──……
「どこ見てんのおまえ」
「へっ!?いや鎖骨がっ…いや違くて!」
「やだ、えっちー」
「不可抗力です!」
ひどいよ芦原くん。見えちゃったんだもん、しょうがないじゃんか。
だいたい芦原くんがワイシャツのボタンをいくつも開けてるから──……って、いやいや。
重要なのはそこじゃない。
もっとも聞くべき事項はほかにある。それもたくさん。鎖骨に見とれてうっかりしていた。
「えっとあの、人違いじゃないんですか…?」
あの芦原くんが。
" 高嶺の問題児 "の芦原くんが。
こんな平凡で目立った特徴のないわたしに、芦原くんが話しかけてくるわけがない。



