「てかひろお昼まだでしょ。ごめんな、時間取らせて」
「ううん、全然…」
そもそも、教室で済むことを人目を気にして芦原くんを廊下まで連れ出したのはわたしだ。
芦原くんは傘を返しに来てくれただけだもん。
余計なことしちゃったな…と心の中で反省する───と。
「ひろが恥ずかしがり屋だって知れたから、気にしなくていいよ」
「な?」とわたしの顔を覗き込むように屈んだ芦原くんがくしゃくしゃと頭を撫でる。
……頭を撫でるの、芦原くんの癖なのかな。
昨日も帰り際に頭をぽんぽんされたし、会長にも同じことをしていたっけ。
芦原くんが女の子との距離が近い人だと分かっていてもドキドキしてしまう。会長が頬を赤らめていた気持ちがわかるのが、少しだけ悔しい。



