「ホント助かった。ありがとね、ひろ」
「これはお礼」と言って、傘と一緒にお菓子の箱を渡される。
さっき勢いでもらった個包装のクッキーとはべつの、コンビニで250円で売ってるちょっと高めのチョコレート。
しかも、わたしが大好きなイチゴ味だ。
偶然とはいえ、素直にうれしい。
学校に来る前に買ってくれたのかな……と、想像したらなんだか和やかな気持ちになる。
「ありがとうご……」
「敬語やだ」
「ご……ご、ござる……」
敬語に厳しい芦原くん。
ありがとうございます、と言いかけたところで指摘されて咄嗟にへんな口調に切り替えると、芦原くんは うはっと吹きだして笑った。
笑った口元からのぞいた八重歯が、芦原くんの雰囲気をさらに柔らかくする。
かわいい、なんて。
そう思ってしまうのは、へんかな。



