「あの芦原くんが教室に出向いてくれてるんだよ? しかも呼び捨てにされちゃって。行かない選択肢はないよひろ」
「で、でも…」
「あたしのことは気にせず。ほら、芦原くん待たせてるんだし。ここで行かないと後々怖そうじゃん?」
千花ちゃんに言いくるめられて、それ以上は何も言えなかった。
「お菓子もあるよって言ってた……」
「ええ……」
笹木ちゃんからの補足情報。
なにそれ、お菓子でわたしが釣れるとでも思ってるの、芦原くん。
今回は千花ちゃんに言われて仕方なくだもん。
断じてお菓子に釣られたわけじゃない。
「……ぶ、無事帰ってこれたらあとで話聞いてね千花ちゃん!」
「はいはい、楽しみにしてる」
「ひろちゃん、がんばってね……!」
親友の千花ちゃんより、たまたま後方扉にいちばん近い席に座っていて芦原くんに伝言を頼まれただけの笹木ちゃんのほうがよっぽど心配してくれていた。



