堂々と遅刻をして今登校したのか、スクールバックを持っていた。ちょいちょいと手招きをしている。
目を瞬かせるしかできないわたしに対し、芦原くんは周りの視線に屈することなく、「ひろー?聞こえてんの?」と名前を繰り返した。
教室中の視線がわたしに集まる。
なんで高嶺の問題児がここにいるの?
なんで呼び捨てされてるの?
なんで二瀬さんが芦原くんと?
言葉にはされずとも伝わる無言の視線。
昨日のできごとはまだだれにも話していなかったから、「ひろ、なんかしちゃったの?」と千花ちゃんにさえ問われる。
一気に注目の的。
無理無理、はずかしい。
「なぁんかワケアリ? あとでゆっくり話聞くから、とりあえず行ってきな?」
落とした箸を拾ってくれた千花ちゃんは、机に箸を置くとそのままわたしのお弁当の蓋も閉め始めた。
「これはあとでゆっくり食べるとしてー」なんて言って自分は卵焼きを頬張っているし。
ずるいよ千花ちゃん、わたしもお腹空いたよ。