翌日、お昼休み。

千花ちゃんの席で、お弁当を食べようとしていた時のこと。



「ひろちゃんっ」

「え、ど、どうしたの笹木(ささき)ちゃん」




クラスメイトの笹木ちゃんが、何やら焦った様子でわたしの机までやって来た。隣にいた千花ちゃんも、なにごと?みたいな顔で笹木ちゃんを見つめている。



「ひろちゃん呼んでって……言われて、」

「呼んでるって、だれ───…」




主語のない笹木ちゃんの言葉に首をかしげながら、流れるように教室の後方扉を見る。

そこにいた眩しいほどの金髪をとらえ、わたしは思わず握っていた箸を床に落としてしまった。

カラカラ……と渇いた音が響く。




「ひーろ」




わたしの名前を呼んでひらひらと手を振るその男。




昨日不可抗力で一緒に帰ることになってしまった“高嶺の問題児”――芦原くんだ。