繋いでいた手を離した芦原くんに、そのまま身体を寄せられてぎゅうっと強く抱きしめられた。
安心する香りと体温が、わたしを包み込む。
「…俺、ひろの困ってる顔好きなんだよなぁ。そそるっつーか…、」
「…変なの……」
「なんか、無性にキスしたくなんの」
「この気持ち、なんとなくわかんない?」と問いかけながら、芦原くんがわたしの髪を耳に掛ける。
指先が頬をかすめ、わたしはぴくりと身体を揺らした。
無性にキスしたくなる気持ちについての問いかけには返事をせず、代わりにクイっと服の裾を引っ張って、上目遣いで芦原くんを見つめる。
涙で濡れた視界には、芦原くんの綺麗な顔があった。
「…ふ。その顔、計算?」
「……うん」
「ふたりきりじゃないけどいいの?」
「……うん」
「そっか、うん」
───今のはちょっと、可愛すぎてやばいかも
耳元でそう言って、芦原くんがわたしにキスを落とした。芦原くんがくれる温度はいつも心地よくて、簡単に溺れてしまいそうになる。
好きな人と過ごすはじめてのクリスマスは、愛おしさがギュッと詰まった一日になった。