「う~~~…っ」

「泣いてばっかだ、ひろ」

「芦原くんがわるいもん…っ」





こんなにわたしを夢中にさせるから。
好きにさせるから。



だから悩みが尽きなくて、涙ばっかり出ちゃうんだ。




むっと口を尖らせるも効果はいまいちのようで、「ごめんな? 俺のことばっかり考えさせちゃって」と意地の悪い笑顔で言われてしまった。



いつものヨユーそうな顔。

悔しいけど、そんな顔も好きだと思った。






「ね。抱きしめてもいい?」



不意にそう聞かれ、かあ……と頬が一気に熱を帯びていくのがわかった。



キスは何も言わずにしたくせに。


許可を取られるのって……なんだかすごく小恥ずかしい。

こくりと小さく頷くと、芦原くんは満足げに微笑んだ。覗いた八重歯がかわいくて、心臓がギュンっとはねる。




両手をひろげた芦原くんに、わたしの身体はすっぽり包み込まれた。ぎゅううっと強く抱きしめられる。


心地よい体温。だいすきな匂い。




「あ​ー…好き」

「っ、」

「好きだよひろ。すっげー好き。なあ、ちゃんと伝わってる?」

「っうう、伝わってる…っ」

「もう絶対離してやんないから。逃げんなよ」






耳元で言われたそれに返事をする代わりに背中に手を回してぎこちなく抱きしめ返すと、ふっと笑う声がきこえた。