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あっという間に駅に着いた。
学校の最寄り駅はあまり栄えていなくて、あまり人の姿が見られない。
わたしと芦原くんが乗る電車はそれぞれ反対方向。
芦原くんはどうやら駅からまた数分歩いて帰らなければならないらしく、傘はそのまま貸すことにした。
わたしはたまたま仕事が休みだったお母さんが駅まで迎えに来てくれるから大丈夫、と話せば、「お人好し」と笑われた。
「なぁ、ひろ」
帰り際、不意打ちで呼ばれた名前に、心臓が跳ねた。
ひろ。その二音が、わたしのなかに溶けていく。
わたしのことを呼び捨てにする人なんてあまりにも希少だ。どくどくと脈を打っている。
そもそも、芦原くんがわたしの名前を知っていたことにもびっくりした。
去年同じクラスだったとはいえ、ほとんど関わりがなかったし忘れられていると思ってたから。
意外と人の顔と名前おぼえるの得意とか……なのかな。



