「ばっっっか、逃げんなひろ!」
「ひぃい! 追いかけてこないで……っ」
逃げ出したたひろの背中を追って俺も走り出す。
冬のつめたい風が肌を切って痛かった。
体育の授業であった短距離走すら面倒で手抜きで走ったのに、こんな街中でダッシュする日が来るなんて思わねーよ、なんなんだ。
今タイム計ったらぜったい自己ベスト。
ぜったい捕まえて、ぜったい離さないから。
俺のこと嫌いなら、本当に心の底から嫌なら、本気で逃げ切って見せろよ。
だってさあ、ひろ。
会いたいって思っていた瞬間にばったり街中で会うなんて、偶然っていうか奇跡っていうか───運命だと思うんだよ。
「……こんなに好きなの、いい加減わかれバカ」
こんなに必死になるくらい─────俺は、ひろのことが好きなんだ。
なあ、そろそろ信じてよ。



