「入れて、傘。濡れて帰んの嫌だから」
「え…っと?」
「きょろきょろすんなよ。おまえしかいねーだろ」
怒られた。ビクッと肩を揺らして萎縮する。
辺りを見渡したけれど、今下駄箱にはわたしと芦原くん以外の姿がない。
つまり、芦原くんが話しかけているのは確かにわたし……ということになる。
……ええぇ、どういうこと?
突如現れたかと思ったらわたしの傘をご所望のこのイケメン───2年D組、芦原 玲於くん。
金髪、制服気崩し、寝坊遅刻魔の三銃士。
素行不良の有名人。
おまけに、毎日べつの女の子とイカガワシイことしてるって噂まである。
……本当かどうかはわかんないけど。