「二瀬、こっち」
12月23日、午後2時。
駅の改札を抜けてすぐ、わたしに気づいた七海が手を振った。
「ごめん待った?早いね」
「さっきまで妹の買い物付き合わされてた。つか二瀬も早いだろ、まだ約束の15分前」
「雪だから気持ち早く出たら、全然時間通り着いちゃって……」
「あー、なるほどな」
黒のボアジャケットにゆるいシルエットのボトムスを履いて、ベージュのキャップを合わせている。
制服姿の印象ばかり強かったから、いつもと違う柔らかい雰囲気は違和感があった。
……うーん。
こうしてあたらめて見ると七海ってやっぱりかっこいいし、モテるのもなんとなくわかるかも。
中学の時からの付き合いで七海の口と意地の悪さに慣れちゃったから、わたしが今更七海を好きになるなんてことはないけど……惹かれるひとは多そう──…
「じろじろ見んなハゲ」
「えぇごめん……」
……うん。ほんと、この口の悪さを知らなかったらの話だけど。