「えっと……いつもは下ろしてる…から、」
「じゃあいつもこっちの髪にしたらいんじゃん?かわいーよ」
「かわっ……!?そ、そういうの誰にでも言うの良くないですよ」
「誰にでもって誰だよ」
「会長とかっ……てかあの、もう、離して……」
髪の毛がさわさわと首筋に当たってくすぐったいのと、芦原くんに触られているという恥ずかしさに耐えられなくなって、芦原くんから逃げようと身体を引く───と。
「ばか、そっち行ったら濡れるじゃん」
グイっと肩を寄せられた。
ふわり、柔らかい香りに包まれる。
香水とはまた違う、優しくて自然な香り。柔軟剤だろうか。
芦原くんから香る匂いがあまりにも好みで、心地よくて、びっくりしてしまった。
「ご、ごめんなさい…」
「おまえが濡れてちゃ俺らが一緒に帰ってる意味ねーだろ」
「そ……ですね」
それはもっともだけど……もとはと言えば芦原くんの距離がバグってるせいだ。
どきどき、ばくばく。
さっきから心臓がずっとうるさいまま。



