『七海、今がチャンスかもねぇ』

『はあ?』

『ひろが芦原くんと喧嘩して落ち込んでる隙に付け込んじゃえばいいじゃん』





そう永野に言われて、はんって鼻で笑った記憶がある。




俺に脈があるかもって勘違いできるくらい二瀬があたふたしてくれたら、今頃とっくに付け込んでるっつーの。



中学時代が二瀬に男の影がまったくなかったから、自分に振り向いてもらえないことを問題視していなかったけど、芦原が現れてからは、嫌でも痛感させられた。




二瀬が俺のことを好きになってくれる日はないんだ、って。





冬休みに遊びに誘ったのは、今更悪あがきをしたかったわけじゃなくて。

ただ本当に、二瀬の気分が少しでも明るくなればいいなって思ってのことだった。




そりゃあ、本音を言えば二瀬とふたりでデートみたいなことができたらなっても思ったけど。



永野がいたほうが俺もヘンに緊張せずにいつも通り接することができるし、何より二瀬も楽しめるんじゃないかって思ったんだ。