静まり返った図書室の空気は、煮詰まった頭を整理するには心地のよい空間だった。

換気のために空けられた窓から冷たい風が入り込む。



ただ意味もなく追っていた文字の羅列から目を離し、わたしはぼんやりと窓の外を見つめた。





芦原くんと最後に話をした日から一週間。


あの日以来、芦原くんとは話すどころか目すら合わせることができなくなった。




芦原くんの姿をみかけるたびに足を止めて気づかれないように違う通路を通ったり、話しかけられてもぎこちなく返事をするだけで、不自然に言葉を遮って逃げたり。




これ以上ドキドキしたくない。
ひとりで意識したくない。



そんな気持ちばかりが募って、芦原くんとの接し方がわからなくなってしまったのだ。





好きとかじゃない。期待なんかしてない。


そう言ったのはわたし。
それは嘘じゃない、はずなのに。



芦原くんのことばかり考えては、どうにもモヤモヤしてしまって落ち着かない。



きっかけは芦原くんの気まぐれに流されたことによるものだったとしても、

今まで芦原くんと話したことや触れ合ったことが全部おふざけだったなんて思えない───思いたくなかった。