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「傘、折りたたみだから小さいんですけど…」
「無いよりは100億倍マシだからいーよ」
「うぅ……」
必然と相合傘をしなければならなくなって、緊張で手に汗がにじむ。
芦原くんはこういうの、慣れているのかもしれない。
かもしれない、じゃなくてきっとそう。
美人会長と仲良しになるくらいだもん。女の子との至近距離とかも緊張とかしないんだろうなぁ。
それに比べ、男の子と用事がある時以外で関わることが早々ないわたしには当然、相合傘をする機会なんてあるはずもなく。
緊張で震える手で傘を広げ、なるべくいつも通りの声で「ど、どうぞ…」と中に入るように促す。
すると、ひょいっと傘の持ち手を奪われた。
びっくりして、「あぇ?」とヘンな声が出る。
「俺が持つよ」
「えっ、い…いいよ!わたしが持つ!」
「その身長じゃ、ずっと腕伸ばして歩くことになるけど」
「……う、」
それを言われちゃなんにも言えない。
153cmのわたしに反論の余地なし。
「おねがいします……」と小さい声で言えば、「うん」と短く返された。



