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千花ちゃんに促されて、廊下の隅にあるベンチにふたりで腰掛けた。
千花ちゃんがくれた水を少し口に含み、頭をすっきりさせる。
「ごめんね……」
「なんで謝るの! ひろ何にも悪いことしてないよ。むしろ、あたしが余計なこと言ったのが悪いんだもん……ごめんね」
千花ちゃんが悪いんじゃない。
あの場で、冗談で誤魔化せなかったわたしがいけなかったんだ。吉良くんも、きっと空気を壊そうとして言ったんじゃないだろうから。
「ねえひろ。芦原くんのことだけど……」
「っす、好きとかじゃないよ!」
千花ちゃんの言葉を遮るように言う。
好きとか、そういうんじゃない。
ドキドキしてばかりなのは、わたしが男の子に耐性がないから。芦原くんは女の子の扱いに慣れているから、わたしにも同じように接しているだけ。
単に、思わせぶりな態度に流されちゃっただけだから。



