保健室で、モテすぎ問題児くんに甘い噛みあとを付けられました。





食堂を抜け、保健室ではなくトイレに向かって歩き出す。


情けない。

あんな、些細な言葉で泣いてしまうなんて。





『かわいーね、ひろは』

『ひろにしかしてない』

『ひろのことが好きって言っても?』






芦原くんにとっての「好き」とか「かわいい」って言葉は、きっとわたしが思っている感覚とは違うんだ。



例えるなら、動物とかアイドルとかに向ける気持ちに似ているんだと思う。


きっとそれは恋じゃない。



……わたしとは違うんだ。

言葉の重みも、抱えた気持ちも。




「うう~……、」

「──ひろっ!」





自分の意思とは裏腹に涙がぽろぽろと零れ落ちた時。焦った声色で名前を呼ばれ、わたしは足を止めた。



「…っ、千花ちゃん」

「待って待って、置いてかないで!?ていうかひとりで泣かないでよぉお!」

「ふぇ…っ、」





「あたしまで泣きそうになるからぁ~!」と言って、千花ちゃんがわたしを抱きしめる。


鼓動が早くて、走ってきてくれたことが分かった。


千花ちゃんのやさしさに触れて、また涙が出そうになる。