え、と声をこぼす。
外の景色に視線を向けると、ぽつぽつと振っていたはずの雨はいつのまにか強くなっていて、ザーザーと激しい音を立てていた。
ひどい、なんてタイミング。
この雨じゃ、傘がない芦原くんを放って帰るのはちょっと気が引けるじゃないか。
仮に置いて帰ったとして風邪なんかひかれたら、ここぞとばかりにわたしのせいにされそうだし……。
「俺と帰んのイヤ?」
「え……っと、」
三白眼が、やっぱりちょっとだけ怖い。
何を考えているかわからないし。
身長があるからどことなく圧もある。
イヤ?って、イヤだよ、イヤに決まってる。
だけどでも、こんな土砂降りの中を帰らせるほど、わたしは冷たい人間じゃない。
……ていうか。
そうやって首をかしげるのはあざとい……と思う。顔の使い方、マスターしてるなぁ……。
「……え、駅まででもいいですか?」
「俺も駅。ありがとー」
あんまり心が籠っていなさそうなお礼に「どういたしまして…」と小さく返す。
これはわたしが望んだことじゃない。雨のせい。しょうがなかった。
そう、だから────不可抗力だ。



