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「あ、茜? うん、無事見つかったんだけどさ、結構人多くて遅くなりそうだから先帰ってていいよ。え? あー……うるせえな、わかってるよ。もう切るから。じゃーな、永野さんにも伝えて」
吉良君との電話を終えた芦原くんは、ふう、と一息ついてスマホをポケットにしまった。
「吉良くん…大丈夫だった?」
「うん。先生には言っててくれるって」
「そっか……ありがとう…」
今日のこと。
千花ちゃん主導のもと、観光名所で食べ歩きをしたり神社でお参りをしたりと充実した半日を過ごしたわたしたち。
千花ちゃんと吉良くんがいようがいまいが、芦原くんはおかまいなし。
ごはんを食べる時以外わたしと芦原くんの距離間は常に2センチで、少しでも離れようものなら制服の裾を引っ張られて隣に引き戻されていた。
千花ちゃんには、お手洗いに行ったときに
「今日の芦原くん、ひろにべったりでかわいいね?♡」
と、語尾にハートがついていそうなトーンで耳打ちされてしまったくらいだ。
吉良くんとはふたりで話す機会こそなかったものの、ちょくちょく視線は感じていたから微妙に気まずかった。



