歩み寄って、ひろが抱えていたノートを3分の2程度奪う。
全部持とうと思ったけれど、ひろのことだから「そんなの申し訳ない……!」って言って奪い返してきそうだから、敢えて数人分だけ残した。
と、まあ、そうは言ってもひろが申し訳なさそうに眉を下げるのも分かりきったことで。
「こーいうのは二人でやった方早いしさ」
「でっ、でも」
「早く終わらせて、一緒帰ろ」
「やだ?」と首を傾げて問いかける。
ひろは途端に顔を赤く染めて、キュッと唇を結んだ。
「……やだじゃない……」
「ふ、うん。やだじゃないね。良かった」
ピュアで無垢で、悪いことなんか全然知らなそう。男に対しての耐性も弱いみたいだし。
距離が近ければ近いほど、すぐに顔を赤くして照れる。
だからイタズラしたくなるし、ひろの表情全部、俺だけのものにしたくなる。
「芦原くんずるい……」
小さく呟かれたひろの声には聞こえないふりをする。
自分がずるいことなんて、自分がいちばんわかってる。



