1クラス……だいたい40人分のノートを持たされたひろは、文句ひとつ言うそぶりを見せず、重そうなそれを一生懸命抱えながら数学準備室へ向かいだした。
不運だなぁ、ホント。
真面目な子って、ぜったい損してる。
もっと適当に、自分に不利益が無いようにうまくやっていけばいいのに。
……って。
少し前まで──ひろに出会う前までの俺だったら、ほったらかして帰ってたんだと思う。
「ひーろ」
名前を呼ぶと、彼女はパッと俺の方を振り向いた。反動で、長くて綺麗な黒髪がなびく。
俺の姿をとらえると、ひろは驚いたように目を見開いた。
「えっ、芦原くん、どうし……」
「それ、俺も手伝う」