唇を離した芦原くんが、覆い被さるように顔の横に手を着いた。
ドキドキ、バクバク。心臓がおかしくなってる。
きっとからかいたいだけ。
わたしみたいに真面目で目立たなくて優柔不断な子を、自分の思い通りにしたいだけ。
わたしの反応を見て楽しむ余裕があるくらいには、芦原くんはいつだって上手だから。
わかってるの。芦原くんは、わたしに本気になんかなってくれないって。
……だけど、今は。
「……ね。このままキスしたら怒る?」
余裕があるようにはとてもじゃないけど見えなくて。
絡んだ瞳が───どうしようもなく、わたしを欲しているようで、自惚れてしまいそうになるんだ。



