とある放課後。
空を見上げると、灰色の雲が一面空を覆っていた。控えめに音を立てて雨が降っている。
……うげぇえ、最悪だ。
雨、今朝はまだ霧雨だったのに。
少し前まで夏の名残で暑かったのが嘘みたい。
最近はだいぶ気温も下がってきたし、今日だって、ブレザーだけじゃちょっと肌寒い。
大きい傘持ってくればよかったなぁ……なんて考えながら鞄から折り畳み傘を取り出して広げ、いざ帰路につこうと昇降口を出た時のこと。
「なぁ。その傘、俺もいれて」
突然かけられた声。
ぱっと振り向けば、そこには隣のクラスの芦原くんが立っていて、わたしは「えっ…?」と声を洩らした。