婚約破棄した相手が毎日謝罪に来ますが、復縁なんて絶対にありえません!

「靴を脱いだ方がいい。足が楽になる」
「ええ、ありがとう」
 少し恥ずかしかったが、言われた通りに靴を脱ぐ。
 道具は何もないので、夕食には水とパンしかない。それも今夜の分だけだ。明日の朝になったらすぐに港町を目指すしかない。
「わたし、孤児院に来て、初めてパンを焼きました」
 少し硬くなったパンを手渡されて、サーラは孤児院での生活を思い出す。
 わずかな間だったが、あそこで学んだことは一生忘れないだろう。
「もちろん最初は、全然うまくできなかった。でも、キリネさんはわたしを叱ったりせずに、丁寧に教えてくれて」
 ルースは、そんなサーラのひとりごとのような言葉を黙って聞いてくれた。
「失敗してもいいと言われたのは、初めてでした。何かに挑戦するのは、とても楽しいことだと知ることができました」
 公爵家でも、王城での妃教育でも、サーラは常に完璧であることを求められていた。
 初めてだとしても、失敗など許されなかった。
 だからいつも気を張っていて、楽しいなどと思ったこともなかった。